The Indifference Engine2017/05/15 07:05

 「ハーモニー <harmony/>」も面白かったので、伊藤計劃さんの短編集「The Indifference Engine」を続けて読んだ。

 いろんな方が書評を書かれてますな...ということで、この短編集も面白かった。本当に、多彩な方です...漫画からハードな小説から、ちょっとコミカルなものまでバラエティに富んだ短編集。絶筆の「屍者の帝国」の冒頭部分も掲載されています。それにしても、この才能、本当に惜しい...。
The Indifference Engine
 収録されているのは以下の9作品。

1.女王陛下の所有物 On Her Majesty's Secret Property
 漫画です。「007」は、記憶を次の身体に移して継がれているって話。これと「From the Nothing, With Love.」は同じテーマで書かれています。映画の「007」がいろんな俳優で継がれているところからアイデアを取ったのかな?それにしても絵が上手だなって思ったら、武蔵野美術大学を卒業されてたんですね。

2.The Indifference Engine
 ルワンダの大虐殺をベースにしてるのかな...部族同士の争いを描いた作品なのですが、主人公は少年兵。この作品は読んでいるときに、心がヒリヒリする感覚がずっと続いてました。これ、現実の話だもんな、世界には、学校にも行けず銃を持って闘っている子供たちがいるんだもんなぁ...。

3.Heavenscape
 コナミのゲームをベースにした小説、これ、「虐殺器官」のプロトタイプですね。この作品では、虐殺をするのは言葉がキーではなく「スナッチャー」と呼ばれるアンドロイドです。

4.フォックスの葬送
 この小説もコナミのゲーム「メタルギアソリッド」の世界です。ベトナム戦争なのかな...「地獄の黙示録」みたいな世界観、男の小説です。

5.セカイ、蛮族、ぼく。
 青春小説のような軽いタッチなのに、むっちゃエログロな小説。こんな、小説も書けるなんて、それが凄いと思った。今、思ったんだけど「ハーモニー <harmony/>」の冒頭も似たタッチで書かれてましたね。

6.A.T.D:Automatic Death ■ EPISODE:0 NO DISTANCE, BUT INTERFACE
 これも漫画。なんとなく「虐殺器官」に世界観が似てるなと思ったら、この漫画の世界観が「虐殺器官」に使われてるんだそうです。

7.From the Nothing, With Love.
 「007」オマージュの作品。この作品、面白い。「007」の作品、読んでみようかなって気持ちになった。

8.解説
 「屍者の帝国」の続きを書いた円城塔さんとの作品。これ、良く分からない...。

9.屍者の帝国
 フランケンシュタインとスパイの話?完成作品読みたかったな...円城塔さんが引き継いで完成させた作品、読んでみよう。

 しつこいようだけど、本当に惜しい才能を失ったな、ボクたちは。