身近な水辺保全講演会2016/01/20 06:02

 周りは家族連れやアベックがたくさんいる中、一人で葛西臨海水族園に行ってきた。
身近な水辺保全講演会
 目的は、都立動物園、水族園の合同企画の講演会に参加するため。生物がらみの講演会を聞くのは大学を卒業した以来かも...。
 講演のテーマは、身近な水辺の保全というもの。動物園、水族園の業務の一端の紹介と、そのテーマを発展させたちょっとアカデミックな内容した。水辺の生物は動物だけではなく、植物も激減しています。海で言うとアマモ場、川ではヨシ原が有名ですよね、生物の命をはぐくむための重要な場所です。この生態系を守っていくって話ですね。
身近な水辺保全講演会
 講演は2部形式で、1部は、動物園、水族園の取り組みの紹介、最初のテーマはアカハライモリを守る活動報告」水族園の中沢さんの講演でした。
 そもそも、何でアカハライモリかというと、アカハライモリは北海道を除く日本全国に生息しているのですが、東京産のアカハライモリを飼育しようと考えたところ、なかなか見つからなかったということで、これの保全を考えたそうです。で、自分は、知らなかったのですが、アカハライモリ、絶滅危惧種としてレッドリストに記載されているんですね。
 で、多摩丘陵の雑木林に保全区域を作って野生で飼育するとともに、水族園で繁殖をしているという話でした。保全区域では100匹程度だった頭数も十数年たった今では、500匹程度までになっているそうです。
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 これが、水族園で飼育されている成体。
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 これが、変体して陸上に上がった幼体。このサイズまでは、2、3ヶ月でこの後、陸上の生活に入るのですが、水辺に産卵に来る成体になる2~3年の間の生態はほとんど分かっていないそうです。
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 ちなみに、お腹側の赤い部分の模様が個体ごとに異なるのでそれを、写真に撮って固体の管理をしているそうです。保全区域でも1回に100個体以上を捕獲して写真を撮ったり、模様が分かりにくい個体にはICチップを入れているそうです。アカハライモリの保全を進めることによって、自然を守っていくということなんですね。

 二つ目のテーマは「水族園の【水辺の自然】を楽しむ」、こちらも水族園の中村さんの講演でした。
 葛西臨海水族園は、マグロの回遊水槽で有名な施設とともに、施設の屋外に関東の昭和30年代の水辺を再現した屋外展示施設を擁しています。
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 葛西臨海水族園には、「流れ」「池沼」「渓流」といった自然を切り取った展示があります。20数年前の造成時には、小さかった木々も今は立派な林になっています。自分は、あまり大きな手を加えていないと思っていたのですが、なるべく自然の状態を保つために、動物だけでなく植物の外来生物の除去や、人が捨てていく金魚やアカミミガメなどのペットの除去を行っているそうです。そうそう、アフリカツメガエルみたいな珍しい生物も見つかったそうです。ちなみに、外来生物は荒川と江戸川にはさまれているため結構入ってきてしまうそうです。

 最後は、国立科学博物館植物研究部の田中さんによる水草はなぜ水中で生きられるのか?──陸上生活と決別した植物の進化物語」と題した講演でした。
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 脊椎動物も水中から陸上に進出した後、クジラやイルカ、マナティなどのように水中での生活を選んだ種類がいるように、植物も一度陸上に進出した後、水中の生活に適応していった種類がいます。総称して「水草」と呼んでいますが、さまざまな科に属したものがいて、たとえば、キンギョソウで知られるカモンバとキクモは形が似ていますが同じ種ではなく、カモンバはクスノキに、キクモはツツジに近いそうです。ちなみに、地球上の植物350,000種のうち水草と呼ばれるものは2,800種、全体の0.8%なんだそうです。
 で、水中でも生きていくために必要な、光、水、温度、栄養は手に入れることはできます。一番の問題は、酸素や二酸化炭素などのガスを交換する仕組みと、陸上の植物同様に受粉を水中で行う仕組みを手に入れることなんだそうです。実際、水草の多くは花を水上に咲かせて受粉します。沖縄で見られるウミショウブの、水上を走る雄花は有名ですね
 田中さんは、水草の生態を調べるとともに、保全活動も行っているそうで、「コシガヤホシクサ」という水草の野生での保全を行っています。野生で保全することの意味は、その植物が生態系で役割を持っていること、飼育下で繁殖させるより種の多様性が保てることが理由だそうです。飼育下では、性質が均一化してしまい主として弱くなってしまうので、なるべく野生で繁殖させたほうがよいとのことでした。
 講義後に、実物の水草を見せてもらいました。
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 マツモとクロモは花が咲いていました、どちらも雄花。青い丸の中に見える点が花です。マツモは葉の根元の茶色いものがそれ、下の写真で分かるかな...。
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 クロモは、青い丸の中のゴミのように見えるものがそれ。ウミショウブと同じように水面を移動し受粉します。スマホのカメラではこれが限界でした。
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 こちらは、リュウゼツランのようですが、浮き草なんだそうです。名前は聞き漏らしてしまいました。たてに水に浮いていて、冬は、水中に沈んで越冬するそうです。
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 帰りに水族園の中も見てきました。
 クロマグロ水槽は衝突防止のテープがすべて撤去されていました。元気に泳いでましたよ。
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 オウサマペンギンが見たくてペンギンの展示場も見てきました。オウサマペンギン、やっぱりきれいですね。
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 東京の海のアマモ場を再現した水槽。アマモは、今日の講演のテーマの水草ですね。
身近な水辺保全講演会
 久しぶりに、科学の講義を聞いて新鮮な感じでした。また、機会があったら、参加したいと思います。